"AIにできないからこそ、人間が最後に想いを吹き込めるところに価値がある"

効率化はもう「始まった段階」ではなく、現場で当たり前に使われている——技術者の視点で見る、できることとできないこと

白尾 佳也
取締役
白尾 佳也
Profile

2009年国立音楽大学音楽文化デザイン学科卒業。映像制作会社を経て渡独し、2015年ベルリン芸術大学サウンド・スタディズ学科修士課程修了。2013〜2017年、ベルリンでサウンドアーティストとして活動し、ベルリン市の芸術家支援助成に採択、ザルツブルクのアーティスト・イン・レジデンスに参加。2018年4月に株式会社SEESAWへプロデューサーとして参画。多様な業界の新規サービス開発やブランディングを、プロデューサー兼UIUXデザイナーとして担当。2026年3月に取締役に就任し、現在は社内のマネジメントや業務改善、AI導入・開発の内製化を推進しながら、UIUX設計やWeb制作の実務にも携わっている。

白尾さんは取締役として、実際の案件へのAI導入や技術的な実務を牽引されています。現場の実感として、AIで実際に何ができて、何がまだできないと感じていますか?

できていることとしては、まず簡単なリサーチや事務作業はもう当たり前にできるようになり、時間やコストの削減に直結しています。分かりやすい例でいうと、400行、500行という膨大な数の確認項目に一つひとつ答えていくようなチェック業務で、律儀に一つずつ処理するのではなく、AIのサポートを受けながらチェックの観点でまとめて見ていくことができるようになりました。UIデザインにおいても、AIでワイヤーを作りブラッシュアップしてスキンデザインに落とし込む流れがかなり型化されており、効率化はもう「始まった段階」ではなく、すでに現場で使われ、活用されてきている段階だと感じています。

一方で、AIがどれほど発達しても、最後に人間が関わらなければ成立しないのが、アウトプットに込める熱量です。AIで作った資料や文章をそのまま出すと、聞き手には案外伝わってしまうものです。クライアントに響くかどうかは、最後に人間がどれだけ想いを乗せられるかにかかっています。逆に言えば、AIにできないからこそ、人間が最後に想いを吹き込めるところに価値がある。ここはAIを使いこなすうえで、とても重要なポイントだと考えています。

クライアントワークでAIを活用する際、技術的に難しいと感じる点はどこですか?

一つは、FigmaのようなデザインツールとAIツールの連携です。すでに使いこなしている人もいますが、コツが要る部分もあり、習熟によって差が出やすい領域です。だからこそ、誰もが同じように使える形に整えていくことが課題だと考えています。また、デザインの仕事である以上、Figmaで見せる場面はまだ多く残っています。AIでHTMLプロトタイプを一旦出すと、ミーティング中にパッと修正できないという弱点がある一方、Figmaならその場ですぐに修正して見せられるので、クライアントに驚いていただける瞬間が少なくありません。そのため、Figmaに起こしておくべきか、HTMLで一貫させた方がいいのか、という新しい判断軸が生まれています。ただ、ツールの進化次第では、この前提自体が数年後には変わっているかもしれません。そこも含めて、柔軟に見直し続けていきたいと思っています。

もう一つは、GitHubやサーバ、ドメインといった、これまで「エンジニアの領域」として切り分けてきたエンジニアリングの部分を、全社で内製化していこうという方針転換です。LPを一つ作るにも、環境構築やセキュリティ面まで踏み込む必要があり、知らない人からすると、AIに聞きながら手探りで進めるところから始めることになるので、正直ハードルの高い話だと思います。こうした概念を知ることと、エンジニアリング全体の基本姿勢を身につけていくことが、これからとても重要になってくると感じています。

技術者の視点から見て、SEESAWのAI活用の面白いところと、課題だと思うところはどこですか?

面白いところは、プロデュース部・デザイン部を問わず、デザイン思考を持って物事を捉えられるメンバーが多いことです。だからこそ、この作業は何のために必要なのか、というところから開発を改めて考えることができます。開発の世界で慣習的に「こうやるものだ」とされてきたことも、私たちは知らないがゆえに「だったらこうした方がよいのではないか」というアイデアが出やすく、実際にエンジニアに話すと「確かにそちらの方がいいですね」となることもあります。そうやって、クリエイティブの力で新しい開発の形を見出していく、そんなアプローチも選択肢としてあるところが、SEESAWの面白さだと思っています。

課題は、既存のタスクや作業の概念から、どれだけ早く脱却し、AIドリブンな発想に切り替えていけるかということです。まだまだ業務の中で、AIが担える余地があると感じる場面が多くあります。ただ、何でもAIに任せればいいということではなく、人間が担うべきところとAIが担えるところを見極め、その共同作業の中でどう新しい価値を生み出していくかを探り、定義していくことこそが、これからの課題だと思っています。

これからSEESAWにジョインする人に必要な技術的な視点があるとしたら、何だと思いますか?また、どんなモチベーションやマインドセットを持った人が活躍できると思いますか?

開発の内製化を目指している今、技術的な視点は「ないよりあった方がいい」というレベルから、「ないと難しい」というレベルに変わってきています。ただ、重要なのはコードが書けることよりも、開発に触れ、仕組みを理解しようとする姿勢です。オーケストラの指揮者に例えると近いかもしれません。すべての楽器を自分で弾きこなせなくても、それぞれの音がどう重なって曲になるかを理解している人の方が強い。そういう概念的な理解を持っている人が、これから活躍できると思います。

マインドセットの面では、「AIに仕事を奪われる」という発想に留まっている人には、なかなか厳しい環境だと思います。ただ、これは仕事の奪い合いの話ではなく、むしろ逆だと考えています。効率が上がった分だけ仕事が減るのではなく、そこで生まれた余白に新たなビジネスチャンスやニーズが増えていく。そうした変化を支援できるだけの知識と体制を、私たちも兼ね備えていきたいと思っています。AIはあくまでツールでしかない、という発想に至れているかどうかが大きな分かれ目です。だからこそ、AIを自分の味方として使いこなせる人の方が強いと思っています。

あともう一つ大事なのが、人とのコミュニケーション能力です。AIがあるからこそ、共感力・言語化力・表現力・愛嬌力・信頼力といった人間らしい力が、なおさら求められていくと思います。

SEESAWは5年後、10年後、どんな会社になっていたいと思いますか?

方向性ははっきり見えています。ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ、いわゆるBTCの境界線は、今よりずっと薄くなっていくでしょう。もちろん、クリエイティブとしての専門性そのものが土台にあることは変わりません。その上で、領域にとらわれずに提案できる人材こそが求められていくはずです。

そういう人材が、今よりもっとたくさんSEESAWに在籍していて、会社として大きく成長している。そんな会社でありたいと思っています。デザイナーやプロデューサー、ディレクターといった肩書き自体も、5年後には新しい形になっているかもしれません。

AI時代に、クリエイティブ領域で価値を持ち続けるためには、何が必要だと思いますか?

AI時代にクリエイティブ領域で価値を持ち続けるために必要なのは、無数に出てくる選択肢の中から、本当に価値のあるものを見極めて選び取り、責任を持って届けられる力だと思っています。AIを使うこと自体はもう当然の前提であり、そこで問われるのは、そのアイデアがAIから出てきたものかどうかではなく、それを「良い」と判断し、熱量を持って人に届けられるかどうかです。

実際にあった話ですが、あるUIデザインの案件で、私からUXの観点で、これは絶対に良いはずだと見極め、熱量を持って伝えたアイデアが、想像以上に先方に刺さり、今ではそのサービスの中心コンテンツとして据えてもらえるようになりました。良いものを見極め、選び取り、熱量を持ってより良い形へと導いていくこと。これこそがディレクションであり、クリエイティブ領域における価値として、これからも残り続けるものだと思っています。

「クリエイティブ」という言葉は、思っている以上に捉え方が広い言葉です。取締役の成田が以前「ミーティングにおけるクリエイティブ力」というものがある、と話していたことがあって、すごく腑に落ちました。ひらめきの瞬間は、人を助け、意思決定をサポートすることもある。ビジュアルをつくる力だけでなく、人間のひらめきや人間同士のコミュニケーションの中にこそ、クリエイティブの価値はあると思っています。だからこそ、これからSEESAWに加わる人にも、目の前の作業の枠を超えて、人や状況を動かす力を育てていってほしいと思っています。

Join Us

まず、ちょっと話しませんか